タイトルの通り。
今現在の「鉄工所見習い」という仕事を、変えることにしました。
考え抜いた上での決断というのは言うまでもないのですが。
まず、自分が何故この仕事をしているのかと言うことを考えてみました。
一番の理由は、「意地」です。
面接の時に「来る場所、間違えたんじゃないの?」と言った社長を見返すための。
次第にそれが面白くなっていって、いつしかそれ以外の所に目標を置いている自分に気が付いて。
そして、壊れた足。
医者からは「もう治りません」と診断され、痛みを和らげるだけの治療が続き。
それを背負ってでも続けていきたいと思えた。この仕事。
…正直なところ、今となってはかなりの部分を占めていた事を自覚しないといけないです。
今日、社長に辞めるという意志を伝えました。
お昼時間に、食べ負えた社長を捕まえて、誰もいない工場で伝えました。
「社長、時間いいですか?」
「ん?どうした?」
「…えっと…来月いっぱいで辞めさせてください」
伝える事に、凄く抵抗はありました。
少ないながらも、給料が上がっていたこと。
何だかんだ言いながら、私の面倒を見てくれている社長。
怒鳴りながらも笑顔が混じって話してくれるようになった工場長。
私よりも仕事が出来るのに、いつも年上だと言うことで立てることを忘れない島津君。
豪快で息子自慢が微笑ましい泰三さん。
年長者で、そして誰よりも知識と技術力がある青木さん。
…全てが、私の心を停めました。
でも、もう迷えません。
迷うことで、仕事に対する気持ちを不純な物にしたくなかったから。
伝えた私の言葉を聞いた社長は、意外にもすんなりと受け入れてくれました。
「分かった。俺には、お前さんを引き留める理由はない」
…意外すぎる言葉でした。
怒声を浴びせられ、殴られることも覚悟の上での言葉だったので。
…と同時に、不安も生まれました。
やっぱり私は、最初からここに来ることが場違いだったんじゃないだろうか。
そんなお荷物が自分から辞めることで、社長も気軽に退職を受け入れたんじゃないだろうか。
…自分で言った言葉だったので、それ以上の不安に包まれることは、許されません。
だから、社長には「最後の日まで、よろしくお願いします」とだけ伝えて、車に戻りました。
初めて、昼休みが長く感じました。
いつもだと、車の中で本を読んだり携帯を弄ったりと、すぐに時間は過ぎていくのに、今日は長く感じました。
心の何処かに穴が空いた気持ちって、きっとこういうことを言うんでしょうね。
ただただ、リクライニングさせたシートに寝転がり、フロントガラス越しの青い空を眺めているだけでした。
昼休みを終えてから、何処かうつろな自分に気が付きました。
心ここにあらず、と言う感じだと思います。
そんな状態で仕事を再開させようとしたとき。
誰かが私の肩を叩きました。
振り返ると、両手に見慣れない草を持った社長でした。
「嬢ちゃん、これ知ってるか?」
いつもと同じ、機嫌がいいときの社長の笑顔です。
まるで、私のさっきの言葉を知らないような、いつもの表情。
手の中にある草を、私に見せてきました。
それを泰三さんものぞきに来て、「社長、これ何です?」と訊くと。
「これはな、『せり』だよ。偶然、その辺に生えてる自然の奴をみつけたのさ」
まるで子供が知っている草を取ってきて、得意げに説明しているような笑顔。
私は正直、あっけに取られた状態。
「嬢ちゃん。せり、食べたことあるか?」
「いえ。…多分、無いです」
「何だよ、だからダメなんだよ!匂い嗅いでみろ」
七草粥に入れることは知っていますが、せりだけを食べたことはないので、味なんて知りません。
社長に手渡されたせり。
小さな苗。
言われたとおりに、軽く揉んで嗅いでみる。
そして、根っこより上を千切り、口に含んでみる。
…多分、春菊のような香り。
「あ。春菊に近いかも」
「そうだろう?独特な匂いがして、くせがあるんだよ」
この時、社長が言った言葉。多分、一生忘れません。
「独特な匂いがして、食べるのも苦手な人が多い。けど、うまく使えば美味しく感じる食材なのさ」
あ。
思い出すことが一つ。
社長、以前に、人間ということを例えるときに、「人は一人一人が違った食材なんだ」って言ってた。
…それだけを言うと、社長は鼻歌を歌いながらセリを持って事務所へ。
他の人たちも、何事もなかったように午後の仕事を再開。
私だけ、みんなより少し遅れて午後の仕事。
私の考え過ぎかも知れません。
偶然が重なっただけかも知れません。
都合のいいように解釈しているだけかも知れません。
それでも、こう思わざるを得ないんです。
社長。
…社長なりに、考えることはあるんだよね。やっぱり。
いらない人材だったかもしれない私をここまで職人として面倒見てくれたのは、間違いなく社長。
この会社。
…何も考えないはずはない。
このおかげで、午後の仕事はいつも通り、一所懸命とそれが空回りする奮闘ぶりで、私の時間は元通り。
辞める理由。
それは、足の事。
そして、体を壊してしまっては、沖縄の母様への仕送りが出来なくなること。
それらを考慮して生まれた理由ですが。
もう一つ、加えられそうです。
自分自身の成長の為、です。
社長に感謝しつつ。
この会社に愛を感じて。
三月いっぱいで、新しい世界へ旅立つ予定でいます。
今現在の「鉄工所見習い」という仕事を、変えることにしました。
考え抜いた上での決断というのは言うまでもないのですが。
まず、自分が何故この仕事をしているのかと言うことを考えてみました。
一番の理由は、「意地」です。
面接の時に「来る場所、間違えたんじゃないの?」と言った社長を見返すための。
次第にそれが面白くなっていって、いつしかそれ以外の所に目標を置いている自分に気が付いて。
そして、壊れた足。
医者からは「もう治りません」と診断され、痛みを和らげるだけの治療が続き。
それを背負ってでも続けていきたいと思えた。この仕事。
…正直なところ、今となってはかなりの部分を占めていた事を自覚しないといけないです。
今日、社長に辞めるという意志を伝えました。
お昼時間に、食べ負えた社長を捕まえて、誰もいない工場で伝えました。
「社長、時間いいですか?」
「ん?どうした?」
「…えっと…来月いっぱいで辞めさせてください」
伝える事に、凄く抵抗はありました。
少ないながらも、給料が上がっていたこと。
何だかんだ言いながら、私の面倒を見てくれている社長。
怒鳴りながらも笑顔が混じって話してくれるようになった工場長。
私よりも仕事が出来るのに、いつも年上だと言うことで立てることを忘れない島津君。
豪快で息子自慢が微笑ましい泰三さん。
年長者で、そして誰よりも知識と技術力がある青木さん。
…全てが、私の心を停めました。
でも、もう迷えません。
迷うことで、仕事に対する気持ちを不純な物にしたくなかったから。
伝えた私の言葉を聞いた社長は、意外にもすんなりと受け入れてくれました。
「分かった。俺には、お前さんを引き留める理由はない」
…意外すぎる言葉でした。
怒声を浴びせられ、殴られることも覚悟の上での言葉だったので。
…と同時に、不安も生まれました。
やっぱり私は、最初からここに来ることが場違いだったんじゃないだろうか。
そんなお荷物が自分から辞めることで、社長も気軽に退職を受け入れたんじゃないだろうか。
…自分で言った言葉だったので、それ以上の不安に包まれることは、許されません。
だから、社長には「最後の日まで、よろしくお願いします」とだけ伝えて、車に戻りました。
初めて、昼休みが長く感じました。
いつもだと、車の中で本を読んだり携帯を弄ったりと、すぐに時間は過ぎていくのに、今日は長く感じました。
心の何処かに穴が空いた気持ちって、きっとこういうことを言うんでしょうね。
ただただ、リクライニングさせたシートに寝転がり、フロントガラス越しの青い空を眺めているだけでした。
昼休みを終えてから、何処かうつろな自分に気が付きました。
心ここにあらず、と言う感じだと思います。
そんな状態で仕事を再開させようとしたとき。
誰かが私の肩を叩きました。
振り返ると、両手に見慣れない草を持った社長でした。
「嬢ちゃん、これ知ってるか?」
いつもと同じ、機嫌がいいときの社長の笑顔です。
まるで、私のさっきの言葉を知らないような、いつもの表情。
手の中にある草を、私に見せてきました。
それを泰三さんものぞきに来て、「社長、これ何です?」と訊くと。
「これはな、『せり』だよ。偶然、その辺に生えてる自然の奴をみつけたのさ」
まるで子供が知っている草を取ってきて、得意げに説明しているような笑顔。
私は正直、あっけに取られた状態。
「嬢ちゃん。せり、食べたことあるか?」
「いえ。…多分、無いです」
「何だよ、だからダメなんだよ!匂い嗅いでみろ」
七草粥に入れることは知っていますが、せりだけを食べたことはないので、味なんて知りません。
社長に手渡されたせり。
小さな苗。
言われたとおりに、軽く揉んで嗅いでみる。
そして、根っこより上を千切り、口に含んでみる。
…多分、春菊のような香り。
「あ。春菊に近いかも」
「そうだろう?独特な匂いがして、くせがあるんだよ」
この時、社長が言った言葉。多分、一生忘れません。
「独特な匂いがして、食べるのも苦手な人が多い。けど、うまく使えば美味しく感じる食材なのさ」
あ。
思い出すことが一つ。
社長、以前に、人間ということを例えるときに、「人は一人一人が違った食材なんだ」って言ってた。
…それだけを言うと、社長は鼻歌を歌いながらセリを持って事務所へ。
他の人たちも、何事もなかったように午後の仕事を再開。
私だけ、みんなより少し遅れて午後の仕事。
私の考え過ぎかも知れません。
偶然が重なっただけかも知れません。
都合のいいように解釈しているだけかも知れません。
それでも、こう思わざるを得ないんです。
社長。
…社長なりに、考えることはあるんだよね。やっぱり。
いらない人材だったかもしれない私をここまで職人として面倒見てくれたのは、間違いなく社長。
この会社。
…何も考えないはずはない。
このおかげで、午後の仕事はいつも通り、一所懸命とそれが空回りする奮闘ぶりで、私の時間は元通り。
辞める理由。
それは、足の事。
そして、体を壊してしまっては、沖縄の母様への仕送りが出来なくなること。
それらを考慮して生まれた理由ですが。
もう一つ、加えられそうです。
自分自身の成長の為、です。
社長に感謝しつつ。
この会社に愛を感じて。
三月いっぱいで、新しい世界へ旅立つ予定でいます。
2008.02.15 /
▲
/ home /

