過激な日々。

ここでは、ちっちゃい女「もん」の、過激な毎日を綴っていきます。 毎日考えていることや、思うこと。 時には乱暴になったり、好きな詩を綴ったり。 少しでも心に留まったら、そっと言葉をください♪

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ショートストーリー。第五回。

●この記事の楽しみ方。

1・「続きから」の中に、最初に動画が用意されていますので、それを再生してください。
2・曲が流れ始めたら、その曲を聴きながら、その後に用意されているショートストーリーをお読み下さい。
3・読み終えましたら、お時間がある方は、小説の内容を反芻しながら、もう一度動画をご覧下さい。

では、内容が気になる方だけ、続きからどうぞ。





















タイトル【レモンの皮】

海に来た。
風が冷たくなってきている。
でも、まだ気分を害するほどではない。快適だ。

防波堤の上に昇り、何となく足を進めてみる。
コンクリートの上を歩く。
僅か30センチくらいの幅を、よちよちと。
海風で少しだけ、スカートが舞う。
ロングスカートって、こういう時、気持ちがいい。

平ぺったくなったスニーカーを脱いで正解だった。
コンクリートは、そんなに痛くない。むしろ、土の上を歩くよりも快適かもしれない。

空は灰色。風も少し強い。
でも、雨は降ってない。潮風が少しだけ肌にまとわりつく感じがするだけ。
人の心が私にまとわりつくより、よっぽどいい。

巨大なテトラポッドが幾つも重なり、私を波しぶきから守る。
心の中の防波堤。
…誰かがそんな上手いことを言っていたっけ。

「疲れた」とか「もうやめて」とか、そんな言葉が素直に出る人が凄く羨ましいと思った。今も、そう。
多分、それは心の防波堤に当たって、砕けた波しぶきから出てきた言葉なんだと思う。
私の心の防波堤は、波しぶきどころか、全てのエネルギーを吸収していたみたい。
自分が抱えられるキャパシティを知らずに。


「お姉ちゃん」


不意に声をかけられた。
下を見ると、小さな女の子が、私を見上げている。
ちょっと驚いたので無言で居ると、言葉が続けられた。



「お姉ちゃんに、これあげる」



小さな手を伸ばして、私に何かを差し出す。
その場でしゃがんで手の平を差し出すと、ぽとりと、小さなモノをくれた。
それは、珊瑚の死骸だった。

海の中に群生している珊瑚。
その珊瑚がその生涯を閉じると、それは白い石となる。
生きている頃は色鮮やかに海中を彩っていたに違いない。
それが、死んでしまうと真っ白い石となり、砂浜に打ち上げられたりする。

「これ、くれるの?」

「うん。綺麗でしょ」

この小さな子は、死骸と言うことを知らない。



…そうだった。



そうなんだ。



知らないから、綺麗に見えるんだ。死骸でも。




その子は、白い歯をむき出しにして、顔をくしゃくしゃにして「にっ」と笑った。
知らない人が見たら、「そんな笑い方しないの!」って怒られそうな、そんな笑い方。
でも。
私には、その笑顔が最高の笑顔に見えた。


「ありがと」


私も、同じように顔をくしゃくしゃにして、笑顔を見せた。
その子は、小さく頷いて、全力疾走で私から離れていった。
しばらく走ってからくるっと振り向き、大きく手を振っている。
私も、大きく手を振り返す。


会社で、どうしようもないことが起こった。
それは、私のせいじゃなかった。
でも、それが言えなかった。
誰も私をかばってくれなかった。
私の話しを訊いてくれる人も居なかった。
私は、その場で泣くことも出来なかった。
ただ、そこに立ちつくすだけだった。

しばらくして、突然解雇された。
理由は張り出されていたけど、見なかった。
見て納得したら、負けだと思ったから。

机の上を少し整理して、何も言わずに会社を出た。
何人かが気にして私の携帯に電話をかけてきたみたいだけど、全て無視した。

どうしてこうなんだろう。
小さい頃からそうだった。
全てを受け入れることで、戦うことを避けて生きてきた。
誰かと対峙するより、逃げ続けた方がよっぽど楽だ。

そんな自分が嫌いだった。

だから、こうして逃げてきて、散歩するのが日常だった。

でも。
もう、逃げちゃ駄目だよね。
もう。
逃げちゃ。


防波堤から降りて、すぐ傍にあった自動販売機に向かった。
ポケットから小銭を取り出して、投入口から入れる。
ボタンを押した。

何年ぶりか忘れたけど、物凄い久しぶりに炭酸飲料を飲んだ。
物凄く、喉が刺激された。
でも、素直に「おいしい」と思えた。


ゆっくりと防波堤の上に戻る。
テトラポッドの下を上から覗くと、海面の動きが見えた。
テトラポッドの中に入り込んだ波は、ゆらゆらと岸壁にあたり、そのままテトラポッドの外へと出ていく。
次の波になるために。
その波の向こうには、まだ美しい彩りを見せる珊瑚も居るはずだ。
それに、珊瑚は砂浜で、新しい命として形を変えている。

寄せては返す。
寄せては返す。


その白い石を握りしめて、海と空が交わる先を見つめた。
雲の隙間から、まっすぐに太陽の光が何本も落ちていた。
ゆっくりと、潮風を吸い込んだ。
ほんの少しだけ、しょっぱく感じた。


こんな味だったっけかな。潮風。




まだまだ防波堤は出来上がってくれないけど、それでも私は今を生きなければならない。
それには、もしかしたらとんでもない苦痛が待っているかもしれない。
でも。
私は、多分珊瑚のように生きたいんだ。
違った形になっても。美しく。
それを、再確認できただけ、いいかな。
今日の散歩は。


さて、明日から違う仕事を探さなきゃ。
今度は、白い石になりたいからね。

珊瑚には、寿命が存在する。
白い石は、壊れるまで、白い石だ。



残った炭酸水を、多目に呑んだ。
喉を通過する前に、少しだけ気管に入り込んだ。




思い切り、むせた。





【Fin】
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コメント

なんだかもんちゃんっぽいなぁ♪

ではまたー

 人間、嫌なことがあっても、そんな風に乗り越えたり、別のことに気がついたり、何気ない日常に癒されたり、安堵したり、それに、たまには頭摺り寄せて泣いてみたりするもんです。

 小生がそれを知ったのは、もう結構前のことになりますけど、でもそのときのことを思い出すだけで、ただそのことだけで、「さあ、今日もいつもみたいにやれるだけやるか」と思えます。
 そんな、自分の日常を思い返させてもらえる小説でした。もしかしたら、もういう日常の一コマみたいの、向いてる8んじゃ無いですかね?もんさんは。

もぐたん。

そうかな。そうなのかな。
うふふ。

こめんと、ありがとうございました。

ぴえーるさん。

そうなんですよね。
人が考えてるほど、実は不幸な事なんて無いはずなんです。
それは個人の価値観で、いくらでも変わるモノだと、考えたりもします。
それをこれで伝えられればな、とも思いました。
何かをきっかけに心の重さを変えることが出来るなら、どんなに楽だろうかな、って。

いつも誉めていただき、光栄です。ありがとうございます。
日常を切り取った物語ですかぁ。
確かに、書いていて楽しいですね。こういうの。
参考にさせていただきます。

こめんと、ありがとうございました。

途中の、
>全てを受け入れることで、戦うことを避けて生きてきた
思い当たるところがあり、ちょっとドキとしてしまいました。

このお話も好きだなあ。
特に最後の部分が好きです。うーん、うまい!

エリさん。

気に入って頂けて、恐縮です。
てれてれ。

最後の部分は、私もお気に入りです。
にやり。
ぶふー
って感じでw

こめんと、ありがとうございました。

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珊瑚刺胞動物門を参照サンゴは、刺胞動物門花虫綱に属する動物(サンゴ虫)のうち固い骨格を発達させる種である。宝石になるものや、サンゴ礁を形成するものなどがある。宝石になるものは珊瑚と呼ばれ、3月の誕生石とされる。ここでは、生物としてのサンゴについて説明する

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もん。

Author:もん。
既に体の小ささは私の履歴書として胸を張る状態に。
すったもんだを経て、何とか仕事と住居を見つけることに成功。
地元の母様を守ることも出来て、満足満足。
相変わらず仮面ライダーも大好きで、次回のディケイドってどう?と眉間に皺を寄せる生意気なライダーファンとなりました。
そんなちっちゃい26歳。今年は27ですなぁ。
※プロフィール画像は、フィクションということにさせてください。
 うふふ。

フラッシュ クロック 「傀儡人間」

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